10月29日(月)の5校時、1年2組の教室で道徳の研究授業と放課後にその授業研究会をしました。主題名は「こまっている ともだちに 友情・信頼」で、ねらいは「身近な友だちと仲良くし、助け合うことの大切さに気付き、困っているときには助け合おうとする思いやりの心情を育てる」です。資料名は「くりのみ(学研)」です。
導入では、担任の高橋先生は遠足で行った秋の森の写真を提示し、ドングリがたくさんあって見つけて嬉しかったことや葉っぱがたくさん落ちていたことなど、豊かな実りに満ちていたことを確認しました。次に、絵本を使って秋の森の豊かな実りを再確認し、それを比較しながら絵本の冬の様子を見せた後、さらに大型ディスプレイと実物投影機を使って冬の森の様子を見せ、冬が寒くて寂しく、木の実などの食べ物がないことを全員で把握しました。豊かな実りの秋と寒くて食べ物のない冬を比較するという方法は、冬の厳しさを実感する上で有効だったと思います。その冬の食べ物のない状況を強く意識させることで、本時の「助け合う」ことの大切さを子ども達が実感することができるのです!
上手な授業展開だなぁと感心したのが、絵本の厳しい冬の森にペープサートのキツネさんとうさぎさんを重ねて提示し、そんな厳しい冬の森の出来事であることを子ども達に意識させたことです。これをすることで、秋は豊かで冬は食べ物がなくて厳しいという比較が生きてきて、その上で本時の学習課題である「友だちについて考えよう」を示すことにより、この2人の間でどんな「友だち」の出来事があるのか、といった物語に対する興味関心を高めることができました!
紙芝居の形式で物語を読み聞かせしましたが、子ども達がとても興味関心を持って集中して聞いていることがよく分かりますね! 物語の内容は、次のとおりです。
食べ物がない冬の森で出会ったキツネさんとうさぎさんが、わかれて木の実を探します。キツネさんはドングリがたくさん落ちているところを見つけることができ、おなかいっぱい食べた後、木の葉で残りのドングリを隠します。家へ帰る途中、うさぎさんと会い、うさぎさんから「食べ物は見つかりましたか?」と聞かれて、「何にもなくて腹ぺこです。」と嘘をついてしまいます。すると、うさぎさんは、栗の実を2つ見つけたから1つあげるねと言って、栗をキツネさんにあげました。きつねさんはそのドングリを握りしめ、涙をぽろっと流します。
ここから、子ども達に考えさせます。
キツネさんがおなかいっぱい食べた後に、どんな気持ちで残りのドングリを隠したのか考えました。子ども達からは、「独り占めしたいから」とか「自分で探したからとられたくない」「違う動物にとられたくない」と、自分のことだけを考えて、拾ったドングリを隠した気持ちを全員で確認できました。これが次の展開でキツネさんが嘘をつく要因となりますし、うさぎさんの親切に涙することにつながる大切な確認です。
次に、キツネさんはどんな気持ちで「何にもなくて腹ぺこです。」とうさぎさんに言ったのか考えました。子ども達からは「もっと自分で食べたいなぁ」とか「自分で見つけたものだから1人で食べたいなぁ」「うさぎさんからももっとほしいな」「他の物をくれるかな」といった意見が出されました。自分がやっと見つけたドングリをうさぎさんにあげたくないため、嘘をついてしまった自己中心的なキツネの気持ちを捉えることができました。
キツネさんは、うさぎさんにもらった栗の実を握りしめながら、涙をぽろっと流したとき、どんな気持ちだったのか考えました。これがこの学習の中心的な問題となりますので、キツネさんとうさぎさんのミニペープサートを使って、二人組で役割演技をさせました。具体的には、うさぎ役の子が(栗の実を渡した後に)「どうして泣いているの?」と聞くとキツネ役の子が自分で考えた一言を言います。担任の高橋先生は、子どもと自分でやって見せ、具体的なイメージをもたせてからペアでやらせました。また、二人組のままでは全体で共有できないので、先生が机間巡視をしながらどんなやりとりをしているのか把握しておき、意図的指名もしながら前で発表してもらいました。子ども達は、「2つしかないのに、もらっていいの?」とか「本当はたくさん食べたのに、嘘ついちゃったから」「うさぎさんは優しいから」と、キツネさんが嘘をついてしまったから涙を流したというだけでなく、うさぎの優しさにふれての涙ということも掴ませることができました。
次の発問として「この後、キツネさんはどうしたでしょう?」を聞きました。これも大切な質問なので、ワークシートに記入させ、発表をさせました。先生は、机間巡視をしっかりと行い、支援の必要な子には適切な対応をし、また座席表に1人1人の考えを書き込んで、意図的指名に生かしました。子ども達は、「ごめんねって謝る」とか「感謝(ありがとうの気持ち)」「またおなかがすかないように食べ物を集めた」「栗を食べてドングリも食べた」「うさぎさんのためにドングリを拾いに行った(お礼)」「拾ったドングリを一緒に食べた」などが出されました。全体的には本時のねらいに沿った意見が出されたのですが、中には「またおなかがすかないように食べ物を集めた」「栗を食べてドングリも食べた」のような意見もあったので、友だちのいいなと思った意見をワークシートに書かせました。
すると、子ども達は「ごめんねって謝る」とか「栗を食べてドングリも食べた」「うさぎさんのためにドングリを拾いに行った(お礼)」「拾ったドングリを一緒に食べた」を書き、友だちの意見を読むことにより助け合うことの大切さや思いやりの心に気付きました。これも大切な「学び合い」です。
最後に「困っている友だちがいたら、どうしますか?」を話し合いました。子ども達は「助けてあげる」とか「どうしたの?と気持ちを聞いてあげる」と答え、物語の出来事を自分の生活の問題として捉えることができました。こうした話し合いで、道徳的な実践力を高めることができます。とても良い指導だと思いました。
三段階による自己評価を行いましたが、全員が「よく考えた」も「友だちの話をよく聞いた」も最高評価をしていました。
導入を工夫して物語の世界に引き込み、役割演技を通してキツネさんの気持ちを深く考えさせ、ワークシートを用いて今日の学習のねらいに迫り、話し合いで道徳的な実践力を高める見事な指導を行った高橋先生と、その指導に応えて主体的・対話的で深い学びの道徳の学習を行った子ども達に大きな拍手を送ります!!
研究会の様子ですが、先生方も今日の授業を通してたくさんのことを学び、研究を深めることができました。ご指導をいただいた市教委の学力向上専門員の臼井先生と古屋指導主事に心からの感謝を申し上げます!!