10月26日(金)の2校時に、1年3組の教室で道徳の校長参観授業を行いました。主題名は「しんせつにするときもちがいい」で、内容項目が「新設、思いやり」で資料名が「はしの上のおおかみ」です。
ねらいは「親切にしたときの気持ちよさを知り、誰に対しても思いやりの心をもって接しようとする心情を育てる」です。
皆さん、意見を言っている子の写真を見て何か気がつきますか? 意見を言うために立ったとき、イスを机の中に入れています。小さなことですが、学習規律を確立するために大切なことです。
朝、落ちたハンカチを拾い、「これは誰のですか?」とみんなに聞いて落とし主に返すことができた子がいました。授業の初めに担任の井上先生はその拾った子に「どうしてハンカチを拾ったのですか?」と聞いたら、その子が「落ちていたから」と答えました。「どうして落ちているハンカチを拾ってあげたのですか?」とさらに聞くと、その子が「ない子が困るから」と言いました。先生が「それは優しい行いだったよね!」と言って本時の課題を提示しました。
「誰にでも優しくすることについて考えよう。」と提示し、「『はしのうえのおおかみ』という物語を、紙芝居で読むね!」と話しました。朝の親切な出来事を取り上げ、誰のものか分からなかったハンカチの落とし主を探すという行為が、「誰にでも優しくすること」なので、今日はそのことについて考えようと自然な形で学習課題を提示し、子ども達も意欲とやる気をもって学習に臨めたことが素晴らしいと感心しました!
子ども達の様子を観ていただくと分かると思いますが、全員、集中して先生の紙芝居を聞いています。導入で子ども達を引きつけ、さらに紙芝居の形式で物語の読み聞かせをすることで、ますます子ども達はこのお話に入り込んで聞いています!
オオカミが橋の上で出会ったうさぎやタヌキ、キツネをいばって追い返して自分が渡り、大きな熊と出会う、というところまで読んでいったん読み聞かせを中断しました。そして、うさぎに通せんぼをして「えへん、へん。」と言ったときのオオカミの気持ちを考えさせるために、役割演技をさせました。胸にオオカミの絵をつけているのがオオカミの役割の演技をした子です。先生が通せんぼをされるうさぎ役をしました。ですから、オオカミ役よりも小さくなっています。「こらこら、もどれもどれ」というセリフをオオカミ役の子に言わせました。感情がこもっていないときには、「そんな言い方だったの?」と問いかけ、よりオオカミらしく言わせるようにしました。その後で、オオカミが「えへん、へん。」と言った時の気持ちを、オオカミ役の子に聞きました。すると「悪い気持ち」とか「怒っている。」「自分が最初に渡りたい。」「自分が強い。」といった意見が出されました。例えば「怒っている。」と答えた子に対して、井上先生は「どうして怒っているの?」と問い返してその理由を聞き、「自分が最初に渡りたいから」という意見を引き出していました。このようにして、オオカミの自分中心的な、しかも意地悪な気持ちを掴ませることができました。
次に、大きな熊に出会って、慌てておじぎをした時のオオカミの気持ちを考えさせました。子ども達は「怖いな。」とか「ぼくが道を譲ろうと思った」と答えました。
橋の上でクマさんが「こうすればいいんだよ」と言って、オオカミを抱き上げ、橋の向こう側に優しく降ろし、自分も橋を渡って行ってしまった。その後ろ姿をオオカミがじっと見つめるところまで読み聞かせしました。さらに、教師がクマさん役、子どもがオオカミ役をして、実際に役割演技をして見せました。オオカミ役の子はとても上手に演技をし、みんなから拍手喝采をされました!
クマさんの姿を見送りながら、オオカミはどんな気持ちになったか考え、ワークシートに記入させました。これが重要な発問なので、ワークシートに書かせてしっかり考えさせました。ワ-クシートの記述が読めるでしょうか。子ども達がオオカミさんの気持ちになって、しっかり書き込んでいることが分かりますね! 意見として、「クマさん優しいな」とか、「うさぎさん達にごめんね」「次は通せんぼなんてしない」「みんなに意地悪したんだ。ごめんね」「今度はみんなに「先にいいよ」って言おう」などが出されました。様々な意見を出すために、先生は子ども達の意見を把握していて、意図的指名もしていました。その結果、クマさんの優しさと自分の意地悪を比較して、反省したり、クマさんにあこがれを抱いたり、自分が親切に変わろうとしていることを子ども達はしっかり掴めました。
物語の続きの話を聞きました。改心したオオカミさんが、クマさんと同じようにしてうさぎさんたちを渡してあげたのですが、子ども達は拍手をして、オオカミさんの改心とその親切な行為を喜んでいました!
この物語には2つの「えへん、へん」が出てくるのですが、最初は、オオカミさんが橋を渡らせないで威張ったもの、2つめは、うさぎさん達を渡してあげて、優しく「いいんだ、いいんだ。」と言いながら言うもの。先生は、この2つの違いを子ども達に聞きました。子ども達は「最初は意地悪、だめ、最後は優しい。」と答えました。この2つを比較することはとても重要で、最初の「えへん、へん」は自己中心的なものであり、最後の「えへん、へん」は親切な行為をした自分に対する自己肯定感であったり、自分が良い人であることを自覚した自尊心からのものです。この違いを、先生は一年生に対して「いいこと、優しくするといい気持ちになった。」とまとめました。この「いい気持ち」に自己肯定感や自尊心を表していて、さすが一年生の担任だなぁと感心しました!
友だちに優しくされて良かったと思ったことはあるか質問をし、子ども達は「鉛筆を拾ってくれた」とか「赤鉛筆を探してくれた」などと答え、親切にされた方もした方もいい気持ちになることを確認し、「誰にでも優しくすると、相手も自分もいい気持ちになる。」とまとめました。これが、学習課題の「誰にでも優しくすることについて考えよう」の学習課題に対するまとめであることはいうまでもありません。さらに、物語の出来事を自分の問題にする、つまり「自分事」にする大切なステップです。こうすることにより、子ども達の道徳的実践力が高まります! 素晴らしい指導ですね!!
最後に本時の学習を振り返り、自己評価を行いましたが、すべての子どもたちが「よく考えた」も「友だちの話をよく聞いた」も最高評価になっていました。
子ども達が物語に感動しながら、役割演技を通してその意味を考え、ワークシートで考えを深め、最後に道徳的な実践力を育成することができた井上先生の指導と、その指導に応えて素晴らしい学習を展開した子ども達に大きな拍手を送ります!